一番心に残っている感動は、勤めて数年目の運動会での出来事です。
運動会ではどの学年の競技、演技も毎年工夫をし、熱が入った指導がなされますが、とくに6年の演技、「組み立て体操」は会場にいるすべての人が沈黙して見守る中での演技です。
午前の種目が終わり、午後の部が始まったころから雲行きが怪しくなり、どんどん空が暗くなってきました。「雨よ、降らないでくれ!」と祈っていたのですが、5年の徒競走の時にぽつり、ぽつりと空から大粒の雨が落ちてきました。これがひどくなれば、中止の判断が迫られます。徒競走が終わったときは、雨はやみかけていたので何とか続けて競技を行うことができました。
ところが6年の「組み立て体操」の直前に、バケツをひっくり返したようなものすごい雨がふりそそぎ、見ている間に運動場が大きな水溜りとなってしまいました。だれもが、もうこれで、中止になってしまう・・と思うほどの雨だったのですが、せっかく練習を続けてきた6年の演技を見てみたい、6年の子供にさせてやりたいという願いが通じたのか、雨はやがて小降りとなり、最後まで行おうという判断が下されました。
そのときです。小学校の教員全員が真っ先に飛び出し、学校中の雑巾とバケツをかき集めて運動場に運び、たまった雨水を取り除く作業が始まりました。やがて教員だけでなく、保護者の方々、来賓の方々までが動いてくださり、なんと運動会に来ていただいていた方々のほとんどがこの作業に協力してくださいました。おかげで、たまった水が少しずつなくなっていき、土の部分が見えるようになっていきました。数十分後には水たまりはほとんどなくなったのです。
さあ、作業も終わり、運動会が再開されました。いよいよ6年の組み立て体操です。水はなくなったものの、足元はぐちょぐちょの粘土のような状態です。そのなかを、6年は胸を張って、入場してきました。「組み立て体操」の一番初めは、笛の合図で、前に倒れる演技です。ピーッと先生の笛がなった瞬間、大歓声が起こりました。みんながいっせいにそろってたおれることが、綺麗に見えることはこどもたちは知っています。どの子どももためらいもなく、笛にあわせて、さっとできたことが、見ている人たちの心を動かしました。地面がどうのこうのということは、もう頭にはありません。その後も、練習してきたとおりに演技をこなしていきました。最後に終わったときには、どの子どもたちも白い体操服が茶色になってびしょびしょになっていました。大きな拍手と大歓声につつまれて、6年の子どもたちは退場していきました。
このときの、教員、保護者、子どもたちとのすばらしい一体感が、今でも忘れられない思い出のひとコマとなっています。